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SQUITEM

SQUITEMは、大深度に賦存する鉱物資源や地熱資源の探査が可能な電磁探査装置です。超電導を利用した超高感度な磁気センサを使い、通常では調査が困難な1,000mを超える深さまで、感度良く調査が可能であり、鉱物資源探査、地熱貯留層探査、石油鉱床探査の調査に実績を上げています。

SQUITEM法とは

SQUITEM法とは、超電導量子干渉素子(SQUID)を磁気センサとして適用する、過渡応答電磁探査(TEM)法のことです。コイルを使用した従来型のTEM法に比べて超高感度な磁気センサを使用してより深い深度の比抵抗構造を明らかにします。

SQUITEMは経済産業省からの委託事業において、2000年代初頭から独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (現:独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構、JOGMEC)により開発が進められてきました。当社は2008年から公益財団法人国際超電導産業技術センター(ISTEC※;当時)とともに開発に参画し、2015年に3号機として完成しました。

(※開発・運用は2016年に設立された超電導センシング技術研究組合に引き継がれ、その後は2020年に設立された超電導センサテクノロジー株式会社が継続しています。)

SQUITEM 3号機一式(左より受信機、FLLユニット、磁力計デュワ)

TEM法

TEM法では、地上にループ状に敷設した電線に流した電流遮断後の過渡応答(渦電流による誘導磁場)を測定します。電流遮断後の時間とともに渦電流は地下深部に伝搬し、この電流により誘導される磁場は、より地下深部の比抵抗構造に関する情報を含んでいます。この磁場の時間変化から地下の比抵抗構造をインバージョンにより推定します。

探査方法

SQUITEM法による地下探査は、探査対象の深度や空間分布、測定点間隔や調査地の地形的条件などによって、以下の2つの送受信方法から選択可能です。

ループ信号源:地上にループ電線を敷設してループ内の複数点で磁場変化を測定する方法

調査対象範囲が比較的狭く高密度な測定間隔を設ける探査に適しており、地下数十メートルから千数百メートル程度の構造を対象とします。
例えば、金属鉱床探査や地熱貯留層探査などに適用されます。
地上ループの1辺は300~500m程度です。調査範囲が大きい場合、ループを複数回張り替えて対象エリアをカバーします。

ループ信号源

ライン送信源:調査対象エリアから3~5km程度離れ、両端を接地した電極間隔2~5km程度の信号源を敷設する方法

調査範囲が数キロメートル四方の比較的広い場合に適用されます。探査深度は地下数百メートルから3,000m程度に適しています。
例えば、比較的広範囲の地熱貯留層探査や石油鉱床探査などに適用されます。

ライン信号源

調査現場での運用事例

送信源の準備

送信方法により、ループ信号源、ライン信号源の2種類があります。

1.ループ信号源の場合

①電線の敷設
1,000m~2,000m分の電線を使用して地上に一辺300~500m程度のループを敷設します。

②送信機の接続
送信ループの任意の1箇所に給電のための発電機と送信機を設置し、電線の両端に送信機からのケーブルをつなげます。

送信機・発電機の設置作業状況

2.ライン信号源の場合

①電極板の埋設
畑や雑草地など3m×10~20m程度の範囲にパワーショベルで穴を掘り、トタン板を複数枚埋設します。

②電線の敷設
2ヶ所の電極埋設点の間をキャブタイヤケーブル(100m/本)でつなぎます。

キャブタイヤケーブル

③送信機の接続
車両に搭載した送信機に電線をつなげます。送信機には大型の発電機(125~150KVA)で給電します。

SQUITEMの準備

SQUITEMプローブ先端部にSQUID素子を取り付け、デュワー瓶に液体窒素を充填し、SQUID素子を浸します。フタをしっかりと閉めて準備完了です。

一回の充填により、約8時間の測定が可能です。フタをしたまま液体窒素を補充することも可能です。

磁気センサの設置

磁気センサの振動はそのままノイズとして記録されてしまいます。振動によるノイズを防止するため、深さ30cmの穴を掘り、デュワー瓶(容器)ごと埋めて地中にしっかり固定します。

硬い岩盤や路面上など穴を掘ることができない場合は、土砂を詰めた土のう袋で磁気センサを固定する場合があります。

土のうで固定した磁気センサ

送信機からの信号送信

送信機から波形を制御した電流を電線に流します。 電流値は20~30Aにおよびます。
対象深度に応じて矩形信号の周波数を変えますが、地下浅部では30Hz、地下深部探査では0.25Hz~1Hz程度が一般的です。

矩形信号の受信波形およびスタック波形

測定

受信機を操作して測定を行います。周辺の磁場ノイズ環境によりますが、地下深部探査では256~512サイクル分の矩形波を測定します。

1測点あたりの計測にかかる所要時間は、30分~50分間程度です。

撤収

調査終了後、敷設したケーブルや埋設した電極等を全て撤去し、原状復帰します。


参考文献

【論文】

荒井英一・林歳彦・永石竜起・太田肇(2005)高温超電導磁力計を用いたTDEM法装置(SQUITEM)の現場適用試験、資源地質、Vol. 55、No.1、pp.1-10. [J-Stage]

荒井英一・片山弘行・野尻冴子(2008)高温超伝導磁気センサーを用いた電磁探査技術による鉱床探査、資源地質、Vol. 58, No.3, pp.177-190. [J-Stage]

荒井英一(2013)高温SQUIDを用いた金属資源探査装置(SQUITEM)の開発、応用物理、Vol. 82、No.7, pp.583-587. [J-Stage]

Hato, T., A. Tsukamoto, S. Adachi, Y. Oshikubo, H. Watanabe, H. Ishikawa, M. Sugisaki, E. Arai, and K. Tanabe (2013) Development of HTS-SQUID magnetometer system with high slew rate for exploration of mineral resources, Superconductor Science and Technology, Vol. 26, 115003.

波頭経裕(2014)超高感度磁気センサで地下1000mを探る、電気学会誌、Vol.134、 No.7、pp.432-435. [J-Stage]

波頭経裕(2016)地下資源探査への応用を目指した高温超伝導SQUIDの開発、応用物理、Vol.85、No.8、pp.684-688. [J-Stage]

波頭経裕(2016)高温超伝導量子干渉計(HTS-SQUID)の地下資源探査への応用、電子情報通信学会誌、Vol. 99、pp.186-192.

波頭経裕(2024)高温超電導量子センシングを用いた地下深部探査によるカーボンニュートラルへの貢献、低温工学、Vol. 59、No.1, pp.3-10. [J-Stage]